施設長アドバイス

両親の介護、何歳から必要?

一般的にメディアで報道される「高齢者」は65歳以上を指すことが多いですが、65~69歳の方で介護が必要になるのは、全体の約2~3%とかなり少数派です。ところが、75歳~79歳になると、約12~13%程度に上昇してきます。85歳になると、約50%にまで達してしまいます。 ですから、両親が70代半ばになれば介護が必要になるのは当然のことで、何もおかしなことではありません。早い段階から、介護について前向きに捉えておいたほうがいいと思います。

ある日突然「要介護」になるわけではありません。

介護が必要となる原因として一番多いのは、やはり「認知症」です。二番目は「脳血管疾患」で、いわゆる脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血などです。そして三番目は、「高齢による衰弱」になります。 この三つの中で、特に認知症を恐れている人は多いでしょう。しかし、認知症はある日突然始まるものではありません。何か月、あるいは何年もかけて、徐々に重度化していくということが一般的です。 また、高齢による衰弱についても、ある日突然寝たきりになるということは普通ありません。だんだんと生活の状況が変化していく。内向きになり、外に出られなくなる。活動性が乏しくなっていく。そうして、長い時間をかけて衰弱していってしまうのです。 私がここでお伝えしたいのは、介護が必要な状態になる前に、必ず「予兆」があるということです。予兆を早めに掴んで対処をすることで、進行を緩やかにすることができる。あるいは元に戻すことができると、医療・公衆衛生の分野の研究で明らかになってきています。

介護が必要になるかもしれない「予兆」

〜5つのチェックポイント〜

一人で外出できているかどうか。

その上で、15分以上は歩き続けられるかどうか。 一人で外出できているかどうかは、気持ちの問題や身体の問題と関わっています。外出がおっくうになり、活動性が乏しくなってしまうと、より早く重度化してしまう可能性があります。

転んだり、ふらついたりしているかどうか。

軽くふらついてしまった、椅子から立ち上がろうとした時にうまくいかず座り直してしまった、階段を上がる時につま先を少し引っ掛けてしまった。こんなことがあるかどうか、ぜひ聞いてあげてください。転倒して骨折など怪我をしてしまう前に、その予兆を掴むことが大事です。

直近半年以内に2~3Kg以上の体重減少があったかどうか。

高齢者が栄養不足に陥ると、体重が減っていき、それに伴い筋肉量も減って、体を動かしにくくなります。また、体力が衰えて、コロナや風邪などに感染しやすくなります。若者であれば軽症で済む風邪であっても、高齢者の場合は肺炎につながる可能性も。それらを防ぐためには、やはり栄養状態をしっかりと良好に保つことが大事で、その最もよい指標こそが「体重」なのです。

むせるかどうか。

高齢期になると嚥下(食べ物や飲み物を飲み込むこと)の機能が衰えることが多くなります。日常的にむせることがあると、高齢者は用心して、ご飯の量を減らしたりします。それが先ほど挙げた、栄養不足・体重減少の要因になります。

趣味や仕事を今まで通り楽しめているかどうか。

庭の花の手入れでもペットの世話でも、なんでも構いません。今まで楽しんでやっていたことが、最近あまり楽しくない。続けられなくなった。そういった場合には、心もしくは身体に何かしらの不調がある可能性があります。

これらはいずれも電話、もしくはビデオ通話で少し会話するだけでも分かることだと思いますので、ぜひこの五つのチェックポイントを確認してみてください。

当てはまるポイントがあった場合は、
介護医療の専門家に気軽に相談してみてください。

具体的には「地域包括支援センター」への相談がおすすめです。
高齢者の介護や生活に関する公的な相談所です。

地域包括支援センターは、日本全国に約5000ヶ所設置されています。日本中のすべての地域を網羅しており、担当する地域が決まっています。きちんと行政が管轄している相談窓口なので安心してください。 ご両親が住んでいる地域を担当しているセンターがどこなのかは、市町村の役場や区役所に確認すればすぐに知ることができます。自治体によっては「高齢者あんしん相談センター」や「おとしより相談センター」など、名称が異なる場合もありますので、事前に調べておくとよいでしょう。

ご両親の居住地が遠く、相談窓口まで直接足を運べない状況でも、
電話での相談が可能です。

基本的に相談は無料なので気軽に相談することができます。 地域包括支援センターには、国の基準に基づき、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員が配属されています。自治体によってはその他の医療・介護の専門職も配置されている場合もあります。これらの専門職がそれぞれの専門性を生かして連携しつつ、私たちの相談に応じてくれたり、適切な支援策へとつないでくれたりします。 相談した場合、当日すぐにというのはさすがに難しいかもしれませんが、間違いなく数日以内には自宅を訪問してくれるはずです。訪問の結果、介護が必要な状態にない状態にあったとしても、「地域の活動に参加してみませんか?」「こういう医療機関におかかりになってはどうでしょうか?」「家の中でこういう運動をしてみませんか?」「悪化させないために、食生活に気を付けてみませんか?」などといった形で、生活へのアドバイスや継続的な見守りをしてくれます。勿論、もし介護が必要な状態に陥ってしまった場合も、いち早く対応してくれます。

一人で背負わず、
専門家から適切な支援を。

皆さんにとって大切な存在である、お父さん、お母さん。ご両親にいずれ介護が必要となってしまうことは、冒頭に申し上げた通り当然のことです。まずはそのことを、娘さんや息子さんの方できちんと理解しておくことが重要だと思います。

もう一つ、重要なことがあります。ご両親がそうした状態になった時、娘さんや息子さんが全部を背負う必要は全くないということです。
法律にも年老いた両親の扶養や介護は子どもの責任であるなんてことは、どこにも書いていません。むしろ近年の法律の規定は、それを社会制度や地域の関係者でフォローしていく責任があるということになっています。ですので、自分たち・子どもの義務や責任だという風には、決して思わないでいただきたいです。

政府は65歳以上の高齢者に向けて、「介護が必要になった時に誰の世話を受けたいか?」というアンケートを実施しました。その結果1位となったのは「ヘルパーや介護の専門家」という回答で、「娘・息子」という回答は下位でした。子どもたちに頼らずに、少し距離をとって暮らしたいと考えている高齢者が多いということが、データ上からも分かっています。

お父さんお母さんを見捨てるわけではなく、大事にするからこそ、専門家から適切な支援を受ける。ぜひ、そうした対応をとっていただきたいと思っています。 (制作協力/シオン)

介護の専門家である高野龍昭(たかのたつあき)氏対談録
"ウチの親、そろそろ介護が必要? 電話でも確認できる5つのチェックポイント"から抜粋

気遣う心を大切に。

親の老いに気付いても、それをどう伝えるか、相手にどう理解してもらうかが大切なポイントです。“老い”は本人がいちばん感じていることなので、久しぶりに帰ってきて一方的に言われたら親もいい気分はしません。

まずは会話の中で最近の体調を尋ね、本人や家族と今後の生活について話し合ってみてはいかがでしょうか。親子であっても、親の気持ち、生活に土足で踏み込まない配慮が必要です。子供から気にかけてもらえるのはうれしくても、心配される=能力が衰えたと思われている、と感じ、受入れがたく思う人もおります。子供の配慮が足りず、プライドを傷つけられたと感じた親が態度を硬化させ、言うことに耳を貸さなくなるケースは、実は多いのです。子供から見ればサポートが必要でも、いつまでも親らしくありたい、威厳を保ちたいと思う親も少なくありません。そういう親には、その思いに配慮した対応を是非心がけてください。

誰もがいつかは直面する親の“老い”。「親が年をとったな・・・」と思うだけでなく、ぜひ変化に目を向けて、気遣うきっかけにしていただければ幸いです。

にこにこ川原田倶楽部 施設長:小関 國雄

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